Agentforceとは?SalesforceのAIエージェントの仕組みや活用例を解説
近年、企業での生成AIの活用が進むなか、Salesforceが提供する「Agentforce(エージェントフォース)」が注目されています。
Agentforceは、質問に回答するだけでなく、Salesforceの顧客情報や業務プロセスと連携し、さまざまな業務を支援・実行できるAIエージェントのプラットフォームです。
しかし、「ChatGPTなどの生成AIと何が違うの?」「Salesforce CRMやData 360とはどう関係するの?」「実際にどのような業務で利用できるの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Agentforceの基本的な仕組みや特徴、具体的な活用例、導入前に確認しておきたいポイントを初心者向けに解説します。
1. Agentforceとは?
Agentforceは、Salesforceが提供するAIエージェントの構築・運用プラットフォームです。
AIエージェントとは、与えられた目的や依頼内容を理解し、必要な情報を取得したり、利用可能な機能を選択したりしながら、業務を実行するソフトウェアのことです。
例えば、顧客から「注文した商品の配送状況を確認したい」という問い合わせがあった場合を考えてみましょう。
一般的なFAQ型チャットボットでは、あらかじめ登録された回答や関連ページを案内することが中心になります。
一方、適切に設定されたAgentforceのAIエージェントであれば、注文情報を取得し、配送状況を確認したうえで、顧客に回答するといった一連の処理を実行できます。
つまり、Agentforceの大きな特徴は、AIが回答するだけでなく、業務上のアクションまで実行できることです。
ただし、AIエージェントが何でも自由に操作できるわけではありません。実行できる業務は、あらかじめ設定されたアクションや権限、制御ルールによって決まります。
2. Agentforceと従来のチャットボット・生成AIの違い
Agentforceを理解するために、従来のチャットボットや一般的な生成AIとの違いを整理してみましょう。
| 比較項目 | 従来のFAQ型チャットボット | 一般的な生成AIチャット | Agentforce |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 決められた質問への回答 | 文章生成、要約、質問への回答 | 業務に関する判断支援とアクションの実行 |
| 回答方法 | 登録済みのルールやFAQ | 学習済み知識や与えられた情報 | AIによる推論と接続された業務データ |
| 業務システムとの連携 | 個別の開発・設定による | ツール連携などによる | SalesforceのデータやFlow、APIなどを活用 |
| 業務の実行 | 設定された処理に限定 | 利用環境やツールによる | 許可されたアクションを組み合わせて実行 |
なお、一般的な生成AIにも外部ツールを使って処理を実行する機能があります。
そのため、Agentforceだけが業務を実行できるというわけではありません。
Agentforceの特徴は、Salesforceの顧客データ、業務ロジック、権限管理などと連携したAIエージェントを構築・運用できる点にあります。
3. Agentforceの基本的な仕組み
AgentforceのAIエージェントは、利用者の依頼を理解し、必要な情報や処理を判断して、設定された範囲でアクションを実行します。
基本的な流れを見てみましょう。
① 利用者からの依頼を受け取る
例えば、営業担当者が次のように依頼したとします。
「A社の最近の商談状況を確認して、次回の打ち合わせに向けた要点をまとめて」
Agentforceは、この依頼から必要な情報や処理を判断します。
② 必要な情報を取得する
Salesforce CRMなどの接続されたデータソースから、権限の範囲内で商談情報や活動履歴などを取得します。
③ AIが処理内容を判断する
取得した情報と設定された指示・ルールに基づいて、回答や次に必要なアクションを判断します。
④ アクションを実行する
例えば、商談情報を要約して営業担当者へ提示したり、必要な条件を満たした場合にSalesforce Flowを呼び出したりできます。
ただし、実行できる処理は事前に構成されたアクションに限られます。
⑤ 結果を返す
実行結果や取得した情報を利用者へ返します。
このようにAgentforceでは、情報の取得、推論、アクションの実行を組み合わせることで、複数のステップが必要な業務にも対応できます。
4. Agentforceを構成する主な要素
Agentforceの仕組みを理解するうえで、重要な要素を紹介します。
AIエージェント
特定の業務や目的を実行するために構築されたAIです。
例えば、顧客問い合わせ対応を支援するエージェントや、営業担当者の業務を支援するエージェントなどが考えられます。
指示・ルール
AIエージェントがどのように振る舞うか、何を実行してよいかを定義するものです。
例えば、「確認できない情報を推測して回答しない」「特定の処理は人間の承認を必要とする」といった制御を設計できます。
アクション
AIエージェントが実際に実行できる処理です。
Salesforceのレコードの取得・更新、Flowの呼び出し、APIを利用した外部システムとの連携などが含まれます。
推論エンジン
利用者の依頼内容を理解し、必要な情報やアクションを判断する仕組みです。
Agentforceでは、AIによる柔軟な判断と、明確な業務ルールに基づく制御を組み合わせる仕組みも提供されています。
なお、Agentforceは機能の進化に伴って構築画面や構成要素の名称が変更されており、利用する環境によって設定方法が異なる場合があります。
5. AgentforceとSalesforce CRM・Data 360の関係
Agentforceは単独でもさまざまな処理を実行できますが、Salesforce CRMやData 360と連携することで、より業務に即した活用が可能になります。
Salesforce CRMとの関係
Salesforce CRMでは、リード、取引先、取引先責任者、商談、ケースなどの業務データを管理しています。
Agentforceは、こうした情報を参照しながら、営業担当者やカスタマーサポート担当者の業務を支援できます。
例えば、取引先に関する情報をまとめたり、問い合わせ内容に関連するケース情報を確認したりすることが考えられます。
Data 360との関係
Data 360は、Salesforce CRMや外部システムなどのデータを接続・整理・統合し、活用するためのデータプラットフォームです。
Agentforceでは、Data 360を通じて必要な顧客情報や企業内のナレッジを活用する構成を実現できます。
例えば、Salesforce CRMに登録された顧客情報に加え、外部システムの契約情報や、社内マニュアルなどを参照して回答する仕組みが考えられます。
ただし、利用するデータの接続やアクセス権限、検索のための設定などが必要です。
Salesforce CRMが業務データを管理し、Data 360がデータの活用を支え、Agentforceが情報に基づく判断やアクションを実行すると考えると、それぞれの役割を理解しやすくなります。
6. Agentforceの具体的な活用例
Agentforceは、営業、カスタマーサポート、マーケティングなど、さまざまな業務で活用できます。
活用例① 営業活動の支援
営業担当者が商談の準備を行う際、関連する取引先情報や過去の活動履歴を確認するには時間がかかります。
Agentforceを活用すれば、必要な情報を取得して要点を整理したり、次回の打ち合わせに向けた確認事項を提案したりする仕組みを構築できます。
これにより、担当者が情報収集に費やす時間を減らし、顧客とのコミュニケーションに集中しやすくなります。
活用例② カスタマーサポートの支援
顧客からの問い合わせに対して、FAQやナレッジを参照して回答するだけでなく、必要に応じて顧客情報やケース情報を取得することができます。
例えば、注文状況の確認や、問い合わせ内容に応じた担当者への引き継ぎなどが考えられます。
ただし、本人確認や個人情報の取り扱い、誤った処理を防ぐための制御を適切に設計する必要があります。
活用例③ マーケティング業務の支援
Agentforceは、マーケティング施策の企画やコンテンツ作成などにも活用できます。
例えば、キャンペーンの目的に応じたメール文面の案を作成したり、マーケティング担当者が施策を検討する際の作業を支援したりすることが考えられます。
Marketing Cloud Nextでは、Agentforceを活用したマーケティング業務の支援機能が提供されています。
ただし、利用可能な機能や必要なライセンスは契約内容によって異なります。
7. Agentforceを導入するメリット
Agentforceの導入によって期待できる主なメリットは、次の3つです。
業務の効率化
情報収集や定型的な問い合わせ対応など、時間のかかる作業の一部をAIエージェントに任せることで、担当者の業務負担を軽減できる可能性があります。
顧客対応の迅速化
AIエージェントが利用可能なデータを参照しながら回答や処理を行うことで、顧客対応に必要な時間の短縮が期待できます。
Salesforceのデータを活用した業務支援
Salesforce CRMやData 360の情報を活用することで、一般的な回答だけでなく、自社の顧客や業務に関連した支援を実現できます。
ただし、これらの効果は導入する業務やデータの整備状況、エージェントの設計内容によって異なります。
8. Agentforceの導入前に確認したいポイント
Agentforceを導入する際には、AIエージェントにどのような業務を任せるのかを明確にすることが重要です。
① 対象業務を明確にする
最初から幅広い業務を自動化するのではなく、問い合わせ対応や社内情報の検索など、対象を限定して検討することをおすすめします。
業務範囲が明確であれば、必要なデータやアクション、期待する成果も整理しやすくなります。
② 利用するデータを整備する
AIエージェントの回答やアクションは、参照するデータの品質に影響されます。
顧客情報の重複や古い情報、誤ったナレッジなどが存在する場合は、事前にデータを整理することが重要です。
③ 権限とセキュリティを確認する
AIエージェントが扱う情報や実行できる操作は、業務上必要な範囲に制限する必要があります。
特に、顧客情報の更新や外部システムへの処理などを行う場合は、アクセス権限や承認フロー、実行結果の確認方法を検討しましょう。
④ テストと運用体制を整える
AIエージェントは、想定外の質問やデータに対して適切に動作するとは限りません。
本番運用の前に、さまざまな問い合わせや処理パターンでテストを行い、期待する動作になるか確認することが重要です。
また、AIエージェントが対応できない場合に、人間の担当者へ引き継ぐ仕組みも検討しましょう。
⑤ ライセンスや利用料金を確認する
Agentforceの利用には、契約内容や利用方法に応じたライセンス、クレジット、従量課金などが関係する場合があります。
導入前には、利用予定の機能と料金体系を確認しておきましょう。
9. SalesforceのAI活用をさらに理解するために
Agentforceの活用を検討する際には、Salesforce CRMやData 360、Marketing Cloud Nextとの関係を理解しておくことが役立ちます。
それぞれの仕組みについては、以下の記事でも解説しています。
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10. まとめ
Agentforceは、Salesforceが提供するAIエージェントの構築・運用プラットフォームです。
一般的な生成AIチャットのように質問へ回答するだけでなく、Salesforceのデータや業務プロセスと連携し、設定された範囲でアクションを実行できることが特徴です。
営業、カスタマーサポート、マーケティングなど、さまざまな業務での活用が考えられます。
一方で、導入するだけですべての業務が自動化されるわけではありません。
Agentforceを効果的に活用するためには、対象業務の明確化、データの整備、適切な権限設定、十分なテストが重要です。
まずは自社の業務課題を整理し、AIエージェントに任せることができる業務から検討してみましょう。

