Data 360のID解決とは?一致ルールと調整ルールの仕組みを初心者向けに解説
SalesforceのData 360を利用する際、「ID解決とは何か」「一致ルールと調整ルールにはどのような違いがあるのか」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
企業では、同じ顧客の情報がSalesforce CRMのリードや取引先責任者、外部システムなど、複数の場所に登録されていることがあります。
Data 360のID解決は、こうした複数の顧客データについて、同一人物かどうかを判定し、統合された顧客プロファイルを作成するための機能です。
本記事では、Data 360のID解決の基本的な仕組みや、一致ルールと調整ルールの違い、Marketing Cloud Nextでの活用方法について初心者向けに解説します。
1. Data 360のID解決とは?
ID解決(Identity Resolution)とは、複数のデータソースに存在する顧客情報について、同一人物かどうかを判定し、統合された顧客プロファイルを作成する仕組みです。
例えば、Salesforce CRMに次のような顧客情報が登録されているとします。
リードの情報
- 氏名:山田 太郎
- メールアドレス:taro@example.com
- 電話番号:03-1234-5678
取引先責任者の情報
- 氏名:山田 太郎
- メールアドレス:taro@example.com
- 電話番号:03-1234-5678
この2つのレコードは、異なるオブジェクトに登録されていますが、同一人物の情報である可能性があります。
ID解決では、設定されたルールに基づいて顧客データを照合し、同一人物と判定されたレコードを統合された顧客プロファイルに関連付けます。
これにより、複数のデータソースに分散している顧客情報を、同一人物の情報として扱いやすくなります。
なお、ID解決は元のSalesforce CRMレコードを自動的に削除したり、1件のレコードに統合したりする機能ではありません。
2. ID解決ルールセットとは?
ID解決ルールセットとは、顧客データをどのような条件で照合し、どのように統合するかを定義する設定です。
ID解決ルールセットには、主に次の2種類のルールがあります。
- 一致ルール(Matching Rules): どのような条件で同一人物と判定するかを設定するルール
- 調整ルール(Reconciliation Rules): 統合プロファイルに反映する項目値を、どのような基準で選択するかを設定するルール
この2つのルールは、それぞれ異なる役割を持っています。
一致ルールで同一人物かどうかを判定し、調整ルールで統合プロファイルに採用するデータを決定します。
3. 一致ルールとは?
一致ルールとは、異なるデータソースに登録された顧客情報を比較し、同一人物かどうかを判定するためのルールです。
例えば、メールアドレスが一致する顧客データを同一人物と判定する、といった条件を設定できます。
① 完全一致(Exact)
完全一致は、比較対象となる項目値が一致しているかを判定する方法です。
例えば、メールアドレスを比較する場合、大文字と小文字の違いを区別せずに照合するケースがあります。
一方で、前後の空白や表記の違いが自動的に補正されるとは限りません。
② 完全標準化(Normalized)
完全標準化は、一定のルールに基づいて値を標準化したうえで比較する方法です。
例えば、メールアドレスの照合では、前後の空白を除去したり、Gmailのユーザー名部分に含まれるピリオドを除去したりする標準化処理が利用されます。
ただし、標準化の内容は対象項目や一致メソッドによって異なります。
③ 一致ルールの設定例
例えば、次のような顧客データが存在するとします。
- データA:taro.yamada@gmail.com
- データB:taroyamada@gmail.com
Gmailのユーザー名部分のピリオドを除去する標準化が適用される場合、これらのメールアドレスは一致するものとして判定される可能性があります。
ただし、完全一致を選択している場合には、このような標準化処理は適用されません。
一致ルールの名称だけで判断せず、実際に設定されている一致メソッドを確認することが重要です。
4. 調整ルールとは?
調整ルールとは、同一人物と判定された複数の顧客データについて、統合プロファイルにどの項目値を採用するかを決定するためのルールです。
例えば、同じ顧客の電話番号が複数のデータソースに登録されている場合、どの値を統合プロファイルに反映するかを決定します。
① データソースの優先順位
特定のデータソースを優先する設定です。
例えば、リードと取引先責任者の両方に電話番号が登録されている場合、取引先責任者の情報を優先する、といった考え方です。
② 更新日時などに基づく選択
利用可能な調整方法に応じて、更新日時などを基準に採用する値を決定できます。
例えば、複数のデータソースに異なる値が存在する場合、更新日時を基準に選択するといった方法が考えられます。
実際に利用できる調整方法は、設定対象やData 360の仕様によって異なります。
③ 調整ルールの注意点
調整ルールによって統合プロファイルに採用される項目値が決定されても、元のSalesforce CRMのレコードが自動的に書き換えられるわけではありません。
ID解決では、元のデータを保持しながら、統合された顧客プロファイルを作成します。
5. 一致ルールと調整ルールの違い
一致ルールと調整ルールの違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 一致ルール | 調整ルール |
|---|---|---|
| 主な役割 | 同一人物かどうかを判定 | 採用する項目値を決定 |
| 判定対象 | 顧客データの一致条件 | 統合後の項目値 |
| 設定例 | メールアドレスの一致 | 特定のデータソースを優先 |
| 実行結果 | 同一人物のレコードを関連付け | 統合プロファイルの値を決定 |
つまり、一致ルールは「誰と誰が同じ人物なのか」を判断し、調整ルールは「どの情報を優先するのか」を判断する仕組みです。
6. Marketing Cloud NextとID解決の関係
Marketing Cloud Nextでは、Data 360で統合された顧客データをマーケティング施策に活用できます。
例えば、Salesforce CRMのリードと取引先責任者に同じ顧客の情報が登録されている場合、ID解決によって統合個人(Unified Individual)として関連付けられます。
これにより、複数のデータソースに存在する顧客情報を、同一人物の情報として扱いやすくなります。
① 顧客情報の統合
複数のデータソースに登録されている顧客情報を、統合された顧客プロファイルとして参照できます。
② セグメントでの活用
統合された顧客データを利用して、顧客の属性や行動などに基づいたセグメントを作成できます。
③ パーソナライズへの活用
統合された顧客データを活用することで、メール本文への差し込みや、顧客に応じたコンテンツの出し分けなどにつなげられます。
ただし、統合された顧客プロファイルを作成しただけですべてのデータがメールで利用できるわけではなく、利用する機能に応じた設定が必要です。
7. ID解決ルールセットの設定で注意したいポイント
① 一致条件を慎重に設定する
一致条件が広すぎると、異なる人物を同一人物として判定する可能性があります。
一方で、一致条件が厳しすぎると、同一人物のデータであっても統合されない場合があります。
利用する顧客データの特徴に合わせて、一致条件を検討することが重要です。
② DMOへのマッピングを確認する
ID解決では、Data 360のデータモデルオブジェクト(DMO)にマッピングされたデータを利用します。
例えば、メールアドレスを一致条件に利用する場合、Contact Point Email DMOなどに必要な情報が適切にマッピングされているか確認しましょう。
③ 自動生成されたルールセットを確認する
Marketing Cloud Nextの初期設定では、ID解決ルールセットが自動生成される場合があります。
自動生成されたルールセットには、メールアドレスや顧客の関連付けに関する一致ルールが設定されていることがあります。
ただし、自動生成された設定がすべての利用環境に最適とは限りません。
実際の一致条件や調整ルールを確認し、必要に応じて設定を見直しましょう。
④ ID解決の処理結果を確認する
ID解決ルールセットを作成しても、すぐにすべてのデータが統合されるとは限りません。
処理状況や統合結果を確認し、想定した顧客データが適切に関連付けられているか確認することが重要です。
8. Data 360のID解決を無料で学ぶ
Data 360のID解決について理解を深めるには、実際の設定画面を確認しながら学ぶこともおすすめです。
株式会社シーアールエムコネクトが運営する「MCN Learning Community」では、Marketing Cloud Nextの初期設定やID解決ルールセットの設定方法について、動画・ナレッジ・Q&Aを無料公開しています。
一致ルールや調整ルールの確認方法、メールアドレスの照合方法なども解説していますので、ぜひご活用ください。
▶ MCN Learning Community(無料)
まとめ
Data 360のID解決は、複数のデータソースに存在する顧客情報を照合し、統合された顧客プロファイルを作成するための機能です。
ID解決ルールセットでは、一致ルールと調整ルールを利用します。
一致ルールは同一人物かどうかを判定し、調整ルールは統合プロファイルに採用する項目値を決定します。
Marketing Cloud Nextでは、こうして統合された顧客データをセグメントやメール配信などのマーケティング施策に活用できます。
ID解決を適切に利用するためには、顧客データのマッピングや一致条件、調整ルールの設定内容を確認することが重要です。

