Data 360とは?Salesforce CRMとの違いやMarketing Cloud Nextでの役割を解説
Salesforceを利用していると、「Data 360(データサンロクマル)」という言葉を目にする機会が増えてきました。
特にMarketing Cloud Nextの導入や初期設定を進める際には、Data 360が重要な役割を担います。
しかし、「Salesforce CRMですでに顧客情報を管理しているのに、なぜData 360が必要なの?」「Data 360と従来のData Cloudは何が違うの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Data 360の基本的な仕組みから、Salesforce CRMとの違い、Marketing Cloud Nextでの役割まで、初めての方にも分かりやすく解説します。
1. Data 360とは?
Data 360は、Salesforceが提供するデータプラットフォームです。
Salesforce CRMだけでなく、外部システムやWebサイトなど、さまざまな場所に存在するデータを接続・整理・統合し、営業活動やマーケティング、AIなどに活用できるようにする役割があります。
例えば、ある企業が次のようなデータを管理しているとします。
- Salesforce CRM:顧客の氏名、会社名、商談情報
- ECサイト:商品の購入履歴
- Webサイト:ページの閲覧履歴
- 外部システム:会員情報や契約情報
これらの情報が別々のシステムに存在している場合、顧客一人ひとりの状況を把握することが難しくなります。
Data 360を活用すると、異なるシステムのデータを共通の形式で扱い、必要に応じて同じ顧客に関連する情報を結び付けられます。
つまり、Data 360は、さまざまな場所にあるデータを、ビジネスで活用できる状態に整えるための基盤です。
Data CloudとData 360は何が違う?
Data 360は、以前「Salesforce Data Cloud」と呼ばれていた製品です。
2025年10月14日にData CloudからData 360へ名称が変更されました。
名称変更によって別の製品になったわけではなく、基本的な製品機能は引き継がれています。
そのため、Salesforceの設定画面や過去のドキュメントでは、現在も「Data Cloud」という表記が使われている場合があります。
本記事では、名称を「Data 360」に統一して説明します。
2. Salesforce CRMとData 360の違い
Data 360を理解するうえで、最初に押さえておきたいのがSalesforce CRMとの違いです。
Salesforce CRMは、主に営業活動や顧客対応などの業務で使用する情報を管理する仕組みです。
例えば、リードや取引先責任者、取引先、商談などのレコードを管理し、担当者が日々の業務で利用します。
一方、Data 360は、Salesforce CRMを含む複数のデータソースから情報を接続・整理・統合し、さまざまな用途で活用できるようにする仕組みです。
| 比較項目 | Salesforce CRM | Data 360 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 顧客情報や営業活動などの業務データを管理する | 複数のデータソースを接続・整理・統合する |
| 管理する情報 | リード、取引先責任者、商談など | CRMデータ、購入履歴、行動履歴、外部データなど |
| データの扱い方 | Salesforceオブジェクトとレコードを中心に管理 | データレイクオブジェクトやデータモデルオブジェクトなどを利用 |
| 主な活用例 | 営業管理、顧客対応、業務プロセス | 顧客データの統合、セグメント作成、パーソナライズ、AI活用 |
Salesforce CRMに顧客情報があるのに、なぜData 360が必要なの?
例えば、Salesforce CRMに次の2つのレコードが存在しているとします。
リード
- 氏名:山田 太郎
- メールアドレス:yamada@example.com
取引先責任者
- 氏名:山田 太郎
- メールアドレス:yamada@example.com
これらが同一人物の情報であっても、Salesforce CRM上では異なるオブジェクトのレコードとして管理されています。
さらに、外部システムにも同じ人物の購入履歴が存在しているかもしれません。
Data 360では、こうした複数のデータを取り込み、共通のデータモデルに整理したうえで、ID解決という仕組みを使って同一人物かどうかを判定できます。
これにより、異なる場所に存在する顧客情報を関連付け、マーケティングなどに活用できるようになります。
ただし、Data 360を導入しただけですべての顧客データが自動的に統合されるわけではありません。
データの取り込み、マッピング、ID解決ルールセットなど、目的に応じた設定が必要です。
3. Data 360の主な機能
Data 360にはさまざまな機能がありますが、ここではMarketing Cloud Nextとも関係の深い4つの機能をご紹介します。
① データの取り込み・接続
Data 360では、Salesforce CRMや外部システムなどのデータを利用できます。
データを取り込む場合は、「データストリーム」という仕組みを使って、データソースからData 360へ情報を連携します。
また、対応する外部データ基盤では、データを複製せずに参照する「ゼロコピー連携」を利用できる場合もあります。
どのような方法でデータを利用するかは、接続先のシステムや用途によって異なります。
② データマッピング
異なるシステムでは、同じ意味の情報でも項目名やデータ構造が異なる場合があります。
例えば、あるシステムでは「メールアドレス」、別のシステムでは「Email」として管理されているかもしれません。
Data 360では、取り込んだデータを共通のデータモデルに対応付ける「データマッピング」を行います。
ここで重要になるのが、次の2つのオブジェクトです。
データレイクオブジェクト(DLO)
データソースから取り込んだ情報を保持するオブジェクトです。
データモデルオブジェクト(DMO)
異なるデータソースの情報を、共通のデータモデルに沿って扱うためのオブジェクトです。
例えば、Salesforce CRMのリードや取引先責任者に関するデータを、Individual DMOやContact Point Email DMOなどに対応付けることができます。
このように、取り込んだデータを共通の構造に整理することで、異なるデータソースの情報を組み合わせて利用しやすくなります。
③ ID解決
ID解決は、複数のデータソースに存在する顧客情報について、同一人物かどうかを判定するための仕組みです。
例えば、次のようなデータがあるとします。
- リード:山田 太郎/yamada@example.com
- 取引先責任者:山田 太郎/yamada@example.com
- 外部会員データ:山田 太郎/yamada@example.com
ID解決ルールセットで設定した条件に基づいて、これらが同一人物と判定された場合、Data 360では「統合個人(Unified Individual)」を作成できます。
統合個人を利用することで、複数のデータソースに分かれている顧客情報を、同じ人物に関連する情報として扱いやすくなります。
なお、ID解決は元のレコードを削除したり、Salesforce CRMのレコードを自動的に1件に統合したりする機能ではありません。
元データを保持しながら、統合された顧客像を作成する仕組みです。
また、同一人物と判定する条件や、どの項目値を優先するかは、ID解決ルールセットの設定内容によって異なります。
④ セグメントの作成
Data 360では、顧客データを条件に基づいて絞り込む「セグメント」を作成できます。
例えば、次のような対象者を抽出することが考えられます。
- 特定の地域に住んでいる顧客
- 過去90日以内に商品を購入した顧客
- 特定の商品カテゴリーに関心を持つ顧客
- 一定期間、購入履歴がない顧客
ただし、こうした条件を利用するには、必要なデータがData 360で利用でき、適切に関連付けられている必要があります。
作成したセグメントは、Marketing Cloud Nextなどのマーケティング施策に活用できます。
4. Marketing Cloud NextでData 360が果たす役割
Marketing Cloud Nextでは、Data 360がマーケティングに必要な顧客データを扱うための重要な基盤となります。
例えば、Marketing Cloud Nextでメール配信を行う場合、単にメールアドレスを登録するだけでなく、誰に配信するのか、どのような条件で対象者を抽出するのかを考える必要があります。
そこでData 360のデータやセグメントが活用されます。
Marketing Cloud Nextでの基本的な流れ
- データの取り込み
Salesforce CRMなどから必要な顧客情報をData 360に取り込みます。 - データマッピング
取り込んだデータをDMOに対応付け、利用できる状態に整えます。 - ID解決
必要に応じて複数の顧客レコードを関連付け、統合個人を作成します。 - セグメントの作成
配信対象となる顧客を条件に基づいて抽出します。 - マーケティング施策の実施
Marketing Cloud Nextでメール配信や自動化された施策などを実施します。
このように、Data 360はマーケティング施策を実施する前段階で、顧客データを整理・活用する役割を担っています。
メールのパーソナライズにも関係する
Marketing Cloud Nextでは、顧客の氏名や属性、購入履歴などを利用してメールの内容を出し分けることができます。
こうしたパーソナライズでは、Data 360の「データグラフ」が重要になる場合があります。
データグラフは、関連するDMOや項目をまとめ、マーケティング施策で必要なデータを参照しやすくする仕組みです。
例えば、メール本文に顧客の購入情報を差し込みたい場合、その情報がData 360に存在するだけでは利用できないことがあります。
利用する機能に応じて、適切なデータマッピングやデータグラフの設定が必要です。
5. Data 360の具体的な活用例
ここでは、Data 360を活用したマーケティング施策の例を紹介します。
活用例:購入履歴に応じたメール配信
ある企業では、Salesforce CRMで顧客情報を管理し、別のECシステムで購入履歴を管理しているとします。
Salesforce CRMの情報だけでは、顧客が最近どの商品を購入したのか把握できない場合があります。
そこで、Data 360を活用して購入履歴を接続し、顧客情報と関連付けます。
そのうえで、例えば「過去90日以内に特定の商品を購入した顧客」というセグメントを作成します。
このセグメントをMarketing Cloud Nextで利用すれば、対象者に関連商品の案内メールを配信するといった施策が考えられます。
つまり、Salesforce CRMで管理する顧客情報に、別のシステムのデータを組み合わせることで、マーケティング施策の選択肢を広げられるのです。
6. Data 360を利用する際の注意点
Data 360はさまざまなデータを活用できる仕組みですが、利用にあたってはいくつか注意点があります。
データを取り込むだけでは活用できない場合がある
データストリームを作成してデータを取り込んでも、それだけですべてのマーケティング機能で利用できるわけではありません。
データマッピングやDMO間の関連付け、ID解決、データグラフなど、利用目的に応じた設定が必要です。
ID解決の条件によって結果が変わる
ID解決では、どの項目を使って同一人物と判定するかによって結果が異なります。
例えば、メールアドレスによる照合でも、完全一致と完全標準化では判定方法が異なります。
設定内容を十分に確認せずに利用すると、意図しない顧客データの関連付けにつながる可能性があります。
データの形式にも注意が必要
電話番号や日付などは、データソースによって形式が異なることがあります。
例えば、電話番号の国際標準形式であるE.164形式を利用する場合、必要な項目にマッピングしただけで元の電話番号が自動的にE.164形式へ変換されるわけではありません。
利用目的に応じて、事前のデータ整備や変換処理を検討する必要があります。
利用量や契約内容を確認する
Data 360では、データ処理やID解決などの利用状況がクレジット消費や料金に影響する場合があります。
また、利用できる機能は契約内容によって異なります。
実際に利用する際は、契約しているエディションや利用可能な機能、クレジットの消費条件などを確認しましょう。
7. Data 360をもっと詳しく学びたい方へ
Data 360は、Marketing Cloud Nextを理解するうえでも重要な製品です。
特に、データストリーム、データマッピング、ID解決ルールセット、セグメントなどは、初期設定や運用に直接関係します。
弊社が運営する「MCN Learning Community」では、Marketing Cloud Nextの初期設定や活用方法を、動画・ナレッジ・Q&Aで無料公開しています。
実際の設定画面を確認しながら学びたい方は、ぜひご活用ください。
MCN Learning Community
https://mcnl-community.crmconnect.co.jp/
8. まとめ
Data 360は、Salesforce CRMや外部システムなど、さまざまな場所に存在するデータを接続・整理・統合し、ビジネスに活用するためのデータプラットフォームです。
Salesforce CRMが顧客情報や営業活動などの業務データを管理する仕組みであるのに対し、Data 360は複数のデータソースを横断して情報を活用する役割を担います。
Marketing Cloud Nextでは、Data 360を活用することで、顧客情報の統合、セグメント作成、メールのパーソナライズなどを実現できます。
まずは、「Salesforce CRMは業務データを管理する仕組み」「Data 360はさまざまなデータを活用できる状態に整える仕組み」という違いを理解することが、Data 360を学ぶ第一歩です。

